契約の基礎知識

大槻経営法律事務所

弁護士・中小企業診断士 大槻 隆

第6回 契約書作成のポイント=契約解除/期限の利益の喪失=

契約書作成のポイント

=契約解除=


これは、一定の事実が発生したときに、契約を解除する条項です。

これがないと、例えば、相手が前回の代金を支払ってくれてないのに、

今回の注文に従って製品を納品しないといけない、というような、

困った状況に置かれることになります。

代金未払を理由に契約解除できれば、納品する義務はなくなります。

ところで、解除の原因になる事実ですが、各種のサンプルに定型のものがあります。

ただし、古い契約書には「和議」「会社整理」などが記載されているので、恥ずかしいです。

もう、そういう裁判手続は存在しません。

解除の前に催告(いつまでに支払ってくださいと要求すること)を必要とするかについては、

事由の性質(破産申立などの場合は即時解除が当然など)にもよりますし、

解除しやすくしたいのか、解除しにくくしたいのかという政策にもよります。

催告を必要とするとした方が解除しにくくなります。

解除と、次に説明する期限の利益の喪失(代金の期限前回収)は

セットで考えるのが良いです。

契約書作成のポイント

=期限の利益の喪失=


金銭消費貸借契約で、借用書などを書かせることがありますが、
期限の利益喪失条項がないために、
延滞している分割金部分しか裁判できないことがあるので要注意です。


100万円を貸し付けた場合に、
「毎月末日に10万円ずつ10回で弁済する。」というだけですと、
1回目から支払をしなくても、その時点で裁判できるのは10万円だけ。
2回目も支払をしなくても、その時点で裁判できるのは20万円だけ。

 

でも、このままでは全部支払わないと予想できますから、
すぐに100万円全額で裁判する必要があります。

 

そのために必要な条項が、期限の利益喪失条項なのです。

 

この条項がないと、期限が過ぎた未払いの分割金しか請求できません。

また、こちらが債務もある場合に相手の支払期限が来ていないと即時相殺もできません。

 

以上のような事情から、絶対に必要な条項になります。

 

一方で、消滅時効(一定期間権利行使しないと消滅する)との関連については

管理上十分に注意する必要があります。

 

民法の場合は10年、商法の場合は5年で債権が消滅してしまいます(消滅時効)。

その期間の起算点は、「権利を行使することができるとき」からになります。

 

ですから、期限の利益を喪失すると、

その時点から全額について「権利を行使することができる」状態になりますから、

そこから時効期間のカウントが債権全額について始まるということです。

 

この点は、注意してください。

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