契約の基礎知識
大槻経営法律事務所
弁護士・中小企業診断士 大槻 隆
第1回 契約の定義と契約自由の原則(と例外)
契約とは
契約とは、
一方の当事者が約束した義務を履行しなかった場合に、
約束違反を受けた他方当事者が、
裁判所に対して訴訟等により強制的な履行や損害賠償などの救済を求めることができる
(=法的拘束力がある)当事者間の合意のこと。
です。
書面にしなくても、口約束でも一応は契約です。
裁判で契約成立の証明が難しいだけです。
(ただし、保証契約など書面でないと有効でない契約もあります。)
契約自由の原則とは
契約に関しては、契約自由の原則があります。
以下の点について、当事者は自由にできます。
- そもそも契約を締結するのかしないのか。
- 誰を相手として契約を結ぶのか。
- 契約の内容をどのようなものにするのか。
ですから、当事者の意思で上記の点などを原則として自由に決めていいのです。
ただし、契約自由の原則の例外があります。
以下の場合には、契約に法的拘束力が認められないことがあります。
契約自由の原則の例外
① 強行規定と任意規定
契約自由の原則は、「強行規定に反しない限り」という制限つきで認められます。
民法第90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、
無効とする。」と規定しています(公序良俗違反=無効)。
民法第91条は、「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を
表示したときは、その意思に従う。」と規定します(強行規定違反=無効)。
何が強行規定なのかは、法律の規定または解釈で判断されます。
それ以外の法律上の規定は任意規定といって、契約で別の定めをすれば契約が優先します。
② 判例による契約自由の原則の制限
裁判所の判例による制限もあります。
例えば、
不動産賃貸借契約における信頼関係理論
→ ただの賃料支払い遅れだけでは契約解除できず、
それが信頼関係を破壊する程度の状態に達していないと契約解除できない等の理論。
継続的取引における解除の制限
→ 期間満了時に更新拒絶をするのに正当事由が必要になってくるケースもあるとか、
解除も軽微な理由では困難になるとか等。
約款の合理的解釈
→文字通りではなく、一方的に不利益な条項は合理的・公正に解釈し直す等
などです。
以上のような制限に反する規定以外は、契約で決めた内容が優先するのです。
次回は、契約書作成のメリットを説明しましょう。
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