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コラム

2023.01.13

中小企業の事業承継

株式承継計画に対する税制改正の影響

令和5年度 税制改正大綱において、相続税及び贈与税の大きな制度改正がうたわれています。

これまで 会社の株式等を後継者へコツコツと贈与されてきた会社オーナーさんにとって
今年は 株式の移転計画を見直すタイミングです。


会社経営者にとって、ご自身に相続が起こった後も会社を継続していくことは重要な課題です。
会社を継続していくには、経営そのものの承継と共に、財産(株式)を後継者へ移転することが必要です。

経営者かつオーナーである中小企業の社長の財産は、会社の株式が大きな比率を占めていることがよくあります。その場合、換価できない会社の株式を相続するために、多額の相続税の負担が求められることとなります。

また、相続財産に会社の株式が含まれ、かつ、後継者以外に相続人がある場合には、
後継者でない相続人が会社の株式を相続することを主張する余地も生じてしまいます。

その相続税の負担軽減と争族対策のために
毎年、会社株式の評価額を計算し、贈与税の実効税率が相続税の限界税率を超えない範囲で
贈与をしていくという相続対策が広く行われています。

この方法は今後も有用です。
しかし、会社オーナーの相続の際における後継者が財産を取得する予定や
会社オーナーの年齢、健康状態に応じて、その贈与方法を見直す必要があります。


=改正のない項目 相続税の生前贈与加算の対象者 =

相続の時に 被相続人から財産を取得しないものについては
今後も相続税の生前加算の対象となりません。

ですから、相続人や受遺者でない孫や嫁・婿、従業員への贈与はこれまでの取扱いと同様となります。
上記の方を後継者として株式を贈与している場合には、これまでの贈与計画を継続しても問題は少ないと考えられます。


=改正項目① 相続税の生前贈与加算の加算期間の延長 =

相続の時に 被相続人から財産を取得した者が、
その被相続人から相続開始前の一定期間に贈与により財産を取得していた場合に
その期間内に贈与により取得した財産の合計額が相続税の計算で財産額に加算されます。

この一定期間は現行3年以内ですが、大綱では7年以内とされています。
(ただし、3年超7年以内の贈与については、合計100万円まで相続税の計算に含まれません。)

この改正を次の事例で考えてみます。
 X1年~X8年 毎年 株式100万円分を贈与
       (贈与税は無税、合計800万円が贈与された)

 X9年  相続開始 相続財産5000万円

現行であれば、5300万円を基礎として相続税を計算します。
  ※5,000万円+100万円×直近3年=5,300万円

改正後は、5600万円を基礎として相続税を計算します。
  ※5,000万円+(100万円×直近7年-100万円)=5,600万円

つまり、贈与した後に節税の効果を発揮させるためには
会社オーナーがより長生きをする必要があるようになるということです。


=改正項目② 相続時精算課税制度における基礎控除の創設 =

相続の時に税金を精算する制度である、相続時精算課税制度。

これまで、この制度を選択して贈与を受けた場合には、その選択をした年分以降、
どんな少額の贈与であっても贈与のあった年分の贈与税申告をする必要がありました。

大綱では、この制度を選択して贈与を受けた場合でも
年110万円までは贈与税の申告が必要ない旨が記載されています。

上記事例でX1年より相続時精算課税制度を適用したとすると
改正後の相続税は相続財産5000万円のみ対象となります。

  ※5,000万円+0円×過去8年=5,000万円
   過去8年 100万円-110万円<0  ∴0円

この改正を受けて、
令和6年以降は相続時精算課税制度を選択して株式の贈与をしていく場面も増えてくると考えられます。

ただし、将来の税制改正によってこの基礎控除分が廃止される可能性も否定できないことを
念頭に置いて計画する必要があるでしょう。


税制改正は3月に国会で可決されるまで確定はしていませんが
昨年10月からの税制調査会において重点的に検討されてきたことを考えると
大きな変更はなく可決されるものと考えます。

会社の円滑な事業承継のために、また、円満な相続のために
今年は贈与・移転計画を早めに再検討し、税制の変化に備えることが有益であるように思います。

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