事業承継を円滑に進める人材戦略

Thermalworks株式会社
富平晃行

第1回 事業承継の前に考えるべき人材戦略とは

事業承継に際し考慮すべき人材戦略の柱

  • 円滑な事業承継とは先10年、30年、50年に渡る会社の成長を目的とする
  • 世代的な人材課題が様々あることを知り、次期社長が経営しやすい陣容を考える
  • 優れた人材戦略づくりが事業戦略を大きく加速させると認識する

承継の際に意識したい「世代間ギャップ」

前文にて「事業承継に関するご相談をいただく機会が増えてきました」と述べましたが、

その理由として挙げられるもののうち、最も基礎的な要因としては、

団塊の世代とその子息である団塊ジュニア世代の世代間移行」があります。

 

団塊世代の現経営者が40代のご子息を後継として選定し、

重要ポストで経験を積ませてきたが、いよいよ社長の座を交代する時期が近くなってきた、

という大きな踊り場にさしかかっている企業は少なくありません。

 

このような世代間での禅譲を考えたとき、

世代間であるがゆえに起こる人材問題が大きな課題になることが往々にしてあります。

まずは継承後、つまり次期経営者がトップに立った際の経営陣を想像してみましょう。

 

承継後の経営陣構成を考える

継承後の経営陣構成を考える際に中心となるのは、現経営陣です。

新社長よりも世代が上の、50代、60代の「番頭的」経営陣の存在です。

 

現社長の優秀なブレーンとして、まさに右腕として活躍してこられた彼らには、

社長禅譲後にも辣腕を振るっていただかなくてはいけません。

しかし、実際のところ、40代の新社長には

少々コントロールが難しい相手になってしまうことも少なくありません。

 

続いて、新社長の下の世代の幹部候補についてです。

今、現場で課長や部長職、まさに現場のリーダーとして会社を牽引している世代です。

 

彼らには10年後、20年後の経営陣として新社長を良く補佐し

会社を大きく前進させるメインエンジンになってほしい存在です。

 

しかし、40代前後の彼らの世代の数的不足感が

多くの企業の成長課題になっているという現実があります。

 

彼らが就職したのは2000年頃、「超就職氷河期」の年度でした。

求人倍率は「1」を下回った時代です。

日本全体で一人の学生に一つの仕事を用意できなかった時代なのです。

 

この現象は会社のピラミッドをいびつなものにしていることが多く、

幹部候補の不足問題が事業承継にも大きな陰を落としているケースは少なくありません。

 

事業戦略と人材戦略を一貫性のあるものにする

こうした世代が新社長を支える経営陣になるということを認識したうえで、

今回のテーマである「人材戦略づくり」の重要性について、考えていきます。

 

人材戦略の上位には当然ながら「経営戦略」があります。

皆様は、日々いわゆる長期経営計画、中期経営計画というものをお考えのことと思います。

  • 自社の強みをどう伸ばすか(差別化をどう図っていくか)
  • 新たなマーケット、付加価値の可能性はあるか
  • 顧客のニーズはどう変化していくと予測できるか

 

といった「見立て」を元に「うちの会社はこの戦略でいく」という計画を立てる際に、

  • 「誰がこの戦略を実行していくのか」
  • 「各戦術面においてキーマンとなるのは誰か」

 

そういった、計画時点での人員構成やエース社員、幹部の役割も同時に計画すべきである

と考えます。具体的に考えるということが重要です。

 

「人」なくして経営戦略の実行実現はあり得ないのです。

人材戦略は最重要経営テーマの一つであると私が考えるのはこういった理由からなのです。

 

次回は、事業承継を前提とした人材戦略づくりの中でも最重要課題となる

「次期社長の右腕」の存在についてお話ししたいと思います。

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