中小企業のコストをかけない、効果的な人材採用・定着・育成法

フリーライター

吉田典史

第4回「事例分析 その1… なぜ、この会社は幹部を養成することができなかったのか?」

管理職や幹部をつくることができなかった会社

今回は、最近、倒産した会社を「反面教師」として紹介しましょう。

 

この会社は、社員の「定着率」が低すぎるので

管理職や幹部をつくることができなかったのです。

 

1990年代半ばに創業した、都内のテレビ番組制作会社です。

当時30代だった男性が社長となり、経営をはじめました。

 

番組制作ディレクターを派遣社員として雇い、放送局に次々と派遣しました。

放送局から得るその代価は、ひとりにつき、月に40万円~130万円。

 

派遣社員は、ピークで80人ほどになりました。

 

ここで、いわゆる「10億円の壁」にぶつかります。

売り上げは、毎年5~7億円前後で推移するようになります。

 

社長や数人の役員の強力な営業で経営はなんとか成り立ちますが、

社員全員の力で稼ぐ体制にはなっていないのです。

 

派遣社員も総務や経理の社員も数年以内に次々に辞めていきました。

「社長の言動に嫌気がさして、退職した人が多かった」とはよくいわれています。

 

社長は情熱家であり、野心家で、行動力はありました。

しかし、感情の起伏が激しいのです。

 

ミスをした社員を30分以上にわたり、追及し、謝罪をさせたりしていました。

成功する理由は、実は失敗する理由にもなる

社員らには、意見を言わせることをしません。

常に、自分の考えに従わせようとしていました。

 

自分は絶対に正しい、という思いが強すぎるあまり、

社員との摩擦が頻繁に起きていたのです。

 

いつしか、役員や管理職たちも辞めていきます。

多い年には、退職者が20人を超えたといわれています。

 

これでは、社員間の情報、目標、意識などの共有はできません。

スキルやノウハウも共有されないはずです。

 

社員各自が独自路線でいわば、無手勝流で仕事を進めることになります。

ムリ・ムダ・ムラのオンパレードとなり、業績は伸び悩みます。

 

社長のたぐいまれな才能や力により、売り上げは10億円が見えるところまで進んだのです。

皮肉なことに、社長の力により、破たんしたともいえるのかもしれません。

 

成功する理由は、実は失敗する理由でもあるのです。

 

こういう社長にお勧めしたいのは、自らの足跡を事実にもとづき、常に記録することです。

 

営業、財務、事業、人事などというくくりを設け、

それぞれに「社長としての仕事」を記録するのです。

毎年、毎月、毎週という区切りにすると、なおよいでしょう。

 

機会あるごとに、それらを見ることをお勧めします。

「恐怖によるマネジメント」ではなく、「愛情によるマネジメント」

おそらく、誰もができないようなことをしてきたはずなのです。

 

あふれんばかりの才能とエネルギーの持ち主であり、

心身ともに健康であり、勤勉だったのではないでしょうか。

 

それらは、会社員のレベルをはるかに上回るものだったはずです。

 

優秀すぎるがゆえに理解する人は少なく、孤立せざるを得なかったのだと思います。

 

大きな困難にぶつかろうとも

それを乗り越えることができる力が十分にあるはずなのです。

 

だからこそ、社員たちのミスにはもう少し寛大になり、

広い視野で見つめてあげてほしいのです。

 

社員たちを怒鳴りつける「恐怖によるマネジメント」ではなく、

「愛情によるマネジメント」をしていただきたいと思います。

 

社員が次々と辞めて、管理職や幹部なども去っていくと、職場が荒れます。

そのとき、社長の心も荒れているのです。

 

冒頭で紹介した社長はそのことがわからないまま、

倒産の憂き目にあったのかもしれません。

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