基礎から学ぼう、相続税

税理士・FP・行政書士

寺尾 省介

第5回 相続税の税額控除には、どんなものがあるの?

相続税の税額控除には、6種類あります。

 

今回はそれら6種類について見ていきましょう。

暦年課税分の贈与税額控除

前回見たとおり、

相続時精算課税制度を適用した贈与財産と相続開始日前3年以内に贈与財産は、

相続税の課税対象財産に加算されます。

 

これらの贈与について贈与税を納付していた場合、
その税額を相続税から控除することができます。

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減の特例を適用しますと、

法定相続分相当額もしくは1億6千万円までの財産

配偶者が相続・遺贈・死因贈与により取得した場合には、

配偶者の納付すべき相続税額は「0」となります。

 

しかしながら、この特例の適用を受けるためには、

一定の書類を添付して申告すること、また、申告までに財産の分割がなされていること
必要です。

 

財産が未分割である場合でも、
申告期限後3年以内の分割見込書」を申告期限内に提出し、

相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が行われた場合、

その日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求書を提出して補正することで

この特例を受けることができます。

 

しかし、当初の申告の際には、

特例を適用しない場合での税額を一旦納税しておかなければなりません。

未成年者控除

相続や遺贈により財産を取得した者が未成年の場合には、通常に計算した相続税額から、

満20歳に達するまでの年数×10万円が相続税額から控除されます。

 

控除をし切れなかった場合には、控除し切れなかった金額について

その未成年者の扶養義務者の相続税額から控除することができます

 

また、過去に未成年者控除を受けている場合には、控除額の調整があります。

 

未成年者控除を受けるには、以下2つの要件が必要になります。

  1. 財産を取得した者が法定相続人であること
  2. 制限納税義務者ではないこと

 

つまり、法定相続人でない孫に遺贈した場合、

孫が未成年であっても、未成年者控除は受けられないということですね。

 

例)平成27年1月10日に父親が死亡。相続人は母親と子1人。

  子どもが2歳8ヶ月。子の相続税額が100万円の場合。

 10万円×(20歳-2歳)= 控除額180万円

 1歳未満は切り捨てられますので、子の年齢は2歳になります。

 

相続税額100万円- 控除額180万円 = △80万円

この80万円を、母親の相続税額から控除できます。

障がい者控除

相続や遺贈により財産を取得した者が障がい者の場合には、通常に計算した相続税額から、

満85歳に達するまでの年数×12万円が相続税額から控除されます。

 

また、この障がい者が特別障がい者である時は、年20万円が相続税額から控除されます。

 

障害者控除を受けるには、以下2つの要件が必要になります。

  1. 財産を取得した者が法定相続人であること
  2. 居住無制限納税義務者であること

計算方法については、未成年者控除と同様です。

相次相続控除

相続税は、同一の財産についてその都度相続税が課税されるため、

短期間に続けて相続の開始があった場合には、

長期間にわたり相続の開始がなかった場合に比べ、著しい税負担の際が生じます。

 

このため、10年以内に2回以上相続が開始し、相続税が課せられる場合には、

前回の相続につき課せられた税額の一定割合相当額を

後の相続の際に課された相続税額から控除し、その負担の軽減を図ることとしています。

 

計算例

 

一次相続:父が死亡。相続財産5億円。相続人は母と子1人で母が全て相続し、配偶者の税額軽減を適用して相続税7605万円を納税。

二次相続:3年2ヵ月後、母が死亡。相続財産6億円。一人っ子が全て相続する。

(税率は平成27年1月1日以降適用のものによっています。)

※ C÷(B-A)が1を超えるときは、1として計算する

 

A;二次相続での被相続人の、一次相続での相続税額:7605万円

B;二次相続での被相続人の、一次相続で取得した財産の価額(債務控除後):5億円

C:二次相続での全ての財産の価額(債務控除後): 6億円

D:二次相続で、その控除対象者が取得した財産の価額(債務控除後):6億円

E:一時相続から二次相続までの年数(1年未満の端数は切り捨て):3年

 

なお、適用対象者は民法上の相続人ですので、

相続放棄した人・相続権を失った人は含まれません。

外国税額控除

海外財産を取得した場合において、

その財産に外国の法令によって日本の相続税に相当する税が課された場合には、

その課された相続税に相当する金額を、算出税額から控除できます。

 

参考国税庁HP:
 ⇒相続税の計算
 ⇒贈与財産の加算と税額控除(暦年贈与)
 ⇒配偶者の税額の軽減  
 ⇒未成年者の税額控除
 ⇒障害者の税額控除
 ⇒相続税基本通達//相次相続控除
(国税庁HPは、改正後ではなく、現行制度の説明です。)

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