基礎から学ぼう、相続税

税理士・FP・行政書士

寺尾 省介

第6回 申告と納税はいつまでにするの?どんな方法があるの?

最終回は、相続税の申告と納税についてお話しましょう。

 

相続税の申告は、死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。

また、相続税の納税期限も同様です。

 

したがって、平成27年1月3日になくなられた場合、

申告・納税期限は平成27年11月3日ですが、11月3日は祭日なので、

申告・納税期限はその翌日の11月4日になります。

 

通常、死亡を知った日は死亡した日と同日ですが、代表的な異なる場合を次に示します。

  1. 失踪宣告を受けて、死亡したものとみなされた場合
    → 失踪宣告に関する審判の確定のあったことを知った日
  2. 失踪宣告の取り消しがあった場合
    → 失踪宣言の取り消しに関する審判の確定のあったことを知った日
  3. 認知に関する裁判または相続人の廃除の取り消しに関する裁判の確定があった場合
    → その裁判の確定を知った日
  4. 相続人が胎児の場合
    → 法定代理人がその胎児が生まれたことを知った日
  5. 弁識能力のない幼児等の場合
    → 法定代理人がその相続が開始したことを知った日など
  6. 遺贈があった場合
    → 遺贈があったことを知った日
  7. 相続人以外のものに対する停止条件付の遺贈(死因贈与など)があった場合
    → その条件が成就した日

申請書の提出先

被相続人の亡くなられたときの住所地が日本国内にある場合には、

相続税の申告書は添付書類とともにその住所地を所轄する税務署長に提出することに

なります。

 

なお、相続または遺贈により財産を取得された方が

日本国内に住所を有しない方(非居住無制限納税義務者や制限納税義務者)である場合は、

納税地を定めて、相続税の申告書等はその納税地を所轄する税務署長に提出します。

未分割の場合の申告

遺産の分割がなされていないため各相続人等の取得財産が確定していない場合には、

民法規定による相続分または包括遺贈の割合により、

相続財産および承継債務の金額を計算して相続税の申告を行うことになります。

(民法代904条の2に規定されている寄与分は除きます)

 

つまり、配偶者と子2人が相続人の場合、

配偶者は2分の1、子はそれぞれ4分の1ずつ相続したものとして申告します。

 

なお、その後に分割協議が整ったことにより、相続税額が過大となったときには、

その事実を知った日から、4ヶ月以内に更正の請求書を税務署長に提出することが

できます。

 

なお、小規模宅地等の特例や配偶者の税額控除など、

未分割では適用できない制度を利用したい場合、

『相続期限後3年以内の分割見込書』を申告期限内に提出することで、

更正の請求書を提出する際に、それらの特例を適用することができるようになります。

連帯納税義務について

相続税というのは、被相続人の財産に対して課されます。

 

ですから、被相続人から相続または遺贈により財産を取得された方が複数人である場合、

その全員が、相続または遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、

お互いに連帯納税義務を負うこととなっています。

 

従いまして、長男と次男の二人が相続人で、各人5,000万円ずつ預金を相続して、

各人175万円の相続税を納めることとなったものの、

次男が相続した預金の全てを借財の返済に充ててしまい、

相続税を納めることができなくなった場合、

長男が次男の相続税を負担しなければならなくなります。

延納

相続税の納税は、金銭にて一括に納付することが原則です。

 

しかし、相続した財産が土地のみであった場合など、

その取得した財産の内容によっては、期限までに納付することが困難な場合もあります。

 

そこで、次の要件の全てを満たしている場合には、

申請によって延納の許可を受けることによって、年賦延納の制度の適用を受けることが

できます。

  1. 納付すべき相続税額が10万円を超えていること
  2. 納付期限等までに金銭で納付することが困難とする事由があること
  3. 延納税額が50万円以上で、延納期限が3年超の場合には、担保を提供すること
  4. 納期限前に延納申請書を提出すること
    (担保提供が必要な場合には、担保に関する書類を添えて)

 

延納には利子税がかかる点に注意が必要です。

物納

相続税も他の税金と同様に、金銭での納付が原則となっていますが、

相続税の対象となる財産には様々なものがあり、

金銭にて一時に納付することが困難な場合もあります。

 

ですから、例外として、次に掲げる要件の全てを満たす場合には、

税務署長の許可を得ることで、課税価格の基礎となった財産で納付することが

認められています。

  1. 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があること
  2. 納期限等までに物納申請書を提出すること
  3. 金銭にて納付することが困難である金額を限度とすること

 

たとえば、
土地と100万円を相続し、相続税を1000万円納付しなければいけないのに、

相続人固有の財産がない場合、物納の限度額は900万円分ということですね。

(900万円 = 相続税1000万円 - 金銭相続額100万円)

 

さて、6回にわたって、徒然なるままに

相続税の計算方法や申告方法といった相続税の枠組みを中心にご説明してまいりましたが、

お役に立つ情報はありましたでしょうか?

 

ご不明な点やご質問がありましたら、寺尾会計までご連絡ください。

 

皆様の相続が円満なものでありますことを心よりお祈り申し上げます。

 

参考国税庁HP:
 ⇒相続税の申告と納税
 ⇒相続財産が分割されていないときの申告
 ⇒相続税の延納
 ⇒相続税の物納
 (国税庁HPは、改正後ではなく、現行制度の説明です。)

[完]

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