事業承継の落とし穴―経営支配権-

有限会社ビジネス・インスパイア 取締役

愛知大学会計大学院非常勤講師

公認会計士・税理士

花野 康成

6.株価対策

株式を異動させるときに問題となるのが株価です。

株価といっても一つという訳ではありません。

取引によって計算方法が異なります。

 

誰が買うかによって、同じ株式でも価格が異なるのです。

相続なのか、会社買収なのか、で株価はまったく異なったものになります。

 

大きく分けて会社法上の株価と税法上の株価を考えます。

取引にあたっては、まず会社法上の適法な株価を考えます。

次に、納税負担等のために税法上の株価を考えます。

会社法上の株価

第三者割当増資を行う際や会社買収の時に考えます。

税金計算に使う株価とは別物です。

 

会社法上は、「公正な価格」を計算する必要があります。

これは、「会社の資産状況その他一切の事情を考慮」して算定されます。

 

ただ、具体的な算定方法は示されていないため専門家に算定を依頼します。

依頼する専門家によって算定方法が異なり結果も違うことがあります。

税法上の株価

主に相続・贈与の申告に使います。

そのままでは、第三者割当増資の株価など会社法上の株価としては使えません。

 

財産評価基本通達によって画一的に計算されます。

会社の規模や取得する人が誰かによって結果が大きく違います。

 

基本的には、会社規模によって次の計算方式の選択ないし組み合わせで計算します。

  • 時価純資産価額方式
  • 類似業種比準価額方式

これ以外に例外的な計算方式として、配当還元方式があります。

 

具体的な計算方法は専門家に任せるとしても、決算毎に把握する必要があります。

なぜなら、会社の業績や上場会社の株価によって毎期変動するからです。

株価低減対策

多くの場合、株式を移動する際の株価は、資金面からも低い方がよいでしょう。

株価の計算要素が分かれば、株価をある程度コントロールすることができます。

 

税法上の株価は、会社の規模が大きくなるほど安くなる傾向があります。

会社規模は、資産総額、取引総額、従業員数で判定されます。

それぞれの区分を知ることは重要です。

 

また、業績が悪くなると株価も下がります。

そのため、多額の役員退職金を支払った時には株価が安くなります。

株価が低い時に移動すればそれだけ資金負担も少なくてすみます。

 

以上、事業承継の落とし穴となる経営支配権対策を説明してきました。

少しでも不安のある経営者は、早めの対策をお勧めします。

[完]

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