2025.05.13
社長応援日記
資金繰りの悪化に備えるタイミングは、いま
先の5月8日にトヨタ自動車が26年3月期の見通しを発表しました。
26年3月期の営業収益は1.0%増加の見込みに対し、営業利益は20.8%減少する見込みです。
円高や「トランプ関税」が減益の原因と説明されています。
愛知県内外の製造業における今期の業績が気になる発表内容といえます。
企業の経営者としては、経営環境がどのような状態になっても自社が継続して活動できるように
リスク回避の対策を講じておく時期と言えるのではないでしょうか。
業界の利益が下がってくると現実味を帯びてくるリスクのひとつが、取引先の倒産です。
もし仮に取引先が倒産した場合には、営業債権が回収できない、あるいは回収に長期の時間を要することになります。
すると、自社の資金繰りが悪化することが考えられます。
状況が回復するまで会社の現金預貯金で経営を続けていくことができれば大きな心配はありませんが
概ねの会社は余剰資金があれば投資に回すなど資金を活用するため、現金預貯金をそのまま資産として保有していません。
その場合、いざの時に何処かから資金を調達できるか否かが会社存続の分かれ道となります。
資金調達方法には次のような手段があります。
1.金融機関等から融資を受ける
2.解約返戻金のある保険契約から契約者貸付を受ける
3.小規模企業共済から貸付を受ける
4.倒産防止共済から貸付を受ける
今回ご紹介するのは4.倒産防止共済についてです。
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は
独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営している制度です。
制度の対象者は、中小企業または個人事業者です。
この共済に加入すると、取引先が倒産した際に、最大8000万円まで借入できます。
借入できる金額は、売掛金等の金額または掛金の最大10倍のうち、いずれか低い金額までです。
この共済の特徴には次のようなものがあります。
①無利子・無担保・無保証人で貸付を受けることができる
業績がよい時に掛金を納め、いざの時には資金調達をすることができます。
②短期低利率で事業資金として貸付を受けることもできる
取引先が倒産した場合でなくとも、解約返戻金の95%の範囲内で資金調達ができます。
③掛金は支払年の損金・必要経費になる
④解約すると掛金が戻ってくる
3年4カ月(40月)以上加入している場合、掛金の全額を解約返戻金として受取れます。
⑤解約返戻金は益金・収入金額になる
掛金を支払った際に損金等として計上されるため、解約返戻金は益金等として課税対象になります。
いざの時の借入が無利子であるのは①でお伝えしたとおりですが、
無利子で貸付を受けた場合、相当する解約返戻金相当額を受取る権利が消滅します。
ですから、実質的には、掛金が支払利息に相当します。
つまり、いざの時の借入利息を資金繰りにゆとりがある際に前払しておき
いざの時がなければ前払した利息相当額を返してもらえる仕組みといえます。
この共済は③⑤の仕組みを使うことにより課税時期を移転し、節税を図る事例が多く把握されていました。
そこで、令和6年度の税制改正により、令和6年10月1日以降に共済契約を解除し、再加入した場合、
その解除の日から2年間の掛金は損金や必要経費の額に算入できなくなったことが昨年の話題となりました。
しかし、この制度の本来の目的である①②についての改正はありません。
自社の資金繰りのリスクを回避する手段の一つとして、このタイミングで検討したい制度です。
参照HP:
中小機構 経営セーフティ共済とは
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/index.html
中小企業庁 中小企業倒産防止共済制度の不適切な利用への対応について
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kyousai/022/002.pdf