2025.02.13
確定申告よもやま話
外貨建で株式等を売買した場合の為替差益【所得税】
令和3年から始まった急激な円安はまだまだおさまる気配がありません。
円が高かった時期に外貨を購入された方については
依然として、為替相場の変動に伴い生じる課税に注意が必要です。
個人の場合、為替差損益は次のような状況で認識されます。
・外貨で資産を買った
・外貨でサービス代金を支払った
・外貨を人に貸し付けた
・外貨を円転した
為替相場の変動に伴い生じる利益、すなわち、為替差益は雑所得として課税されます。
今回は、上記2つの前提を踏まえた上で
外貨建で株式等を購入・売却した際の課税処理についてご紹介します。
【外貨建ての株式を売却した場合】
株式等の売却益に含まれる為替差損益については、株式の譲渡に係る損益に含まれます。
よって、為替差損益は譲渡所得に含まれますから、雑所得として別途認識する必要はありません。
例)株証券会社の円口座にて、外国株式Aを10ドルで購入し、12ドルで売却した。
購入時の相場:1ドル90円
売却時の相場:1ドル100円
適正な認識:(12ドル×100円)-(10ドル×90円)=譲渡益300円(譲渡所得)
誤った認識:(12ドル-10ドル)×100円=譲渡益200円(譲渡所得)
10ドル×(100円-90円)=為替差益100円(雑所得)
【保有していた外貨を用いて株式を購入した場合】
為替差損益は、個人の場合、外貨を用いて取引した際に認識されます。
よって、外貨を使って資産を購入した時点で為替差損益を認識する必要があります。
例)以前から保有していた12ドルで、株式Bを購入した。
米ドルを入手した時の相場:1ドル100円
株式Bを購入した時の相場:1ドル110円
適正な認識:12ドル×(110円-100円)=為替差益120円(雑所得)
誤った認識:12ドルで12ドルの資産を取得しただけなので、為替差益は0円
為替差益相当額は、株式Bを売却した際の譲渡益に含めて、譲渡所得として課税される。
近年においては、多くの方が特定口座内で有価証券売買を行っています。
特定口座での取引であれば、株式等の取得価額や売買損益の管理・計算は金融機関が行ってくれます。
さらに、源泉あり口座であれば、確定申告も不要で、納税モレの心配もないため
安心して株式等の取引を行うことができます。
しかし、株式等を売却した代金をいったん外貨で受け取り、その後にその外貨で新たに株式等を取得する場合、そこで生じた為替差損益の存在を金融機関が通知してくれる仕組みはありません。
よって、外貨で株式等を売却した場合には、
売却した際の為替相場と取得した外貨の数量をご自身で管理し、
その外貨で株式等を購入したり、その外貨を円転する場合の課税処理に備えていく必要があります。
その管理が手間と感じられる方については、株式等の売却代金を円貨で受取られるか、
あるいは、株式等の売却により取得した外貨で、売却同日に別の株式等を購入することをお勧めします。
類似コラム:外貨を円転した際の為替差益
https://www.teraokaikei.com/2023/02/23/souzoku_kawasesaeki/
為替差益にまつわる法人税&所得税
https://www.teraokaikei.com/2022/10/03/kawasesaeki/
参考HP
国税庁 外貨建取引による株式の譲渡による所得
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/02.htm
国税庁 預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/43.htm