2025.01.23
寺尾会計の税務的な毎日
暦年贈与加算期間が7年に。申告漏れを防ぐポイント<相続税 >
令和5年度の税制改正において、相続税の計算に加算する暦年贈与期間が7年間に延長しました。
今回は、この改正に伴い申告漏れや税務調査を避けるために準備しておきたいポイントをお伝えします。
贈与税申告書はまとめて保管しましょう
相続税の計算に加算する暦年贈与期間が延長された影響で、
期間内のすべての贈与を後になってから把握するのは、実務上困難さが増していくでしょう。
しかし、少なくとも、贈与税申告書を提出した贈与については税務署は確実に相続税への加算を求めます。
ご自身で贈与した財産に係る贈与税申告書については受贈者から控えをもらっておくと
相続税申告の際の暦年贈与加算の計上漏れを防ぐことができます。
令和6年以降の通帳は7年間保管しましょう
現代において贈与される代表的な財産は、現金や預貯金です。
また、大きな購入物品等の支払についても、預貯金口座を通じて多くなされます。
そこで、相続税の申告書を作成する際には
過去年に贈与がなかったかどうかを確認するために、通帳に記載のある預貯金取引を確認します。
ですから、繰越処理した通帳も7年間は保管しておく必要があります。
預貯金通帳が保管されていない場合には、金融機関で必要な期間の取引明細を取得することとなります。
その際、発行手数料が必要となりますが、通帳を保管してあれば避けられる出費といえます。
入出金内容を通帳へ軽くメモ書きしましょう
通帳を保管しておくメリットは、不要な出費を押さること以外にもあります。
ご本人であっても7年前の入出金を思い出すのは至難の業です。
ご家族へ贈与した際はもちろん、家電や車を購入された、学費援助した、祝い金を渡したなど
通帳であれば、メモ書きをすることができます。
税務署から不要な疑いをもたれることを避けるためにも
大きな金銭移動がある場合には、金銭移動の理由をメモ書きすることが望まれます。
預貯金取引を経由しない贈与は別途メモを残しましょう
株式の贈与や自動車の名義変更など、預貯金取引を経由せずに行われる贈与については
あとから事実関係を追うことができるように、履歴をメモとして残しておくことが好ましいでしょう。
また、贈与とは異なりますが、
ネット銀行(オンラインバンキング)の口座に入っている預貯金や、
電子マネー、キャッシュレス決済のチャージ残高といったデジタル資産についても
その存在を相続人が把握できるように、加入時の書類を保管しておくなどといった工夫が必要です。
これも贈与なの!?「うっかり贈与」に気をつけましょう
現金や物品を人にあげた場合には贈与となるのは明確です。
しかし、日常生活では贈与と言われない行為が、税務上において「贈与」と判定される場合もあります。
たとえば、保険料の支払者でない方が保険の満期金を受取るような場合、「贈与」となります。
また、自分以外の方が支払うべき税金を支払った場合にも原則として「贈与」となります。
相続税の計算に加算される期間が延長しようとも、贈与そのものがなければ税務調査を恐れる必要もなくなります。
「うっかり贈与」とならないように、どのようなものが「贈与」であるのか、気にかけてみましょう。
信頼できる税理士と長く付き合う
今後7年分の預貯金取引を確認する必要が出てくると、税理士も相続税申告書の作成のためにかなりの工数が加わります。
相続税の申告期限である10カ月以内に、すべての取引を人の力のみでは確認しきれない取引量になる方も出てくると考えています。
ですから、預貯金の取引量や資産額が多い方については
ご自身の相談相手として、毎年、取引状況や贈与状況を確認してくれて長くお付き合いができる税理士を早めに見つけておくことも一つの相続税対策となるでしょう。
以上、長々とお伝えしてまいりましたが、
取り扱うデータ量が増加することが予想される中、努力するのは納税者の皆様だけではないはずです。
税理士の側もより一層、IT化に注力していく必要性を強く感じています。
それと同時に、金融機関側でも預貯金取引のcsvデータを相続人へ提供するといった対応がなされていってほしいと切に願います。