分割協議・遺言の大切さ

寺尾会計事務所

税理士 寺尾省介

 

この原稿は平成28年6月23日時点の法令によります。

第1回 遺産の所有者の流れ と 遺産分割の現況

『分割協議・遺言の大切さ』をよりご理解いただくために、

まず、遺産の所有者の流れを見ていきます

相続開始後の遺産所有者

人が亡くなると、その人の相続が開始します。

相続開始後、相続人全員でその遺産を分けることを『遺産分割』といいます。

 

 

相続が開始すると、遺産(相続財産)は、一旦 相続人全員の共有となります。

 

「相続が開始すると預金は払い出しできない」とよくいわれます。

これは財産が共有状態になっているからです。

 

相続人間のトラブルに巻き込まれるリスクや二重払いリスクを避けるため、

銀行は慎重な対応をとるというわけです。

遺産分割後&未分割の場合の遺産所有者

 

次に、遺産分割協議がまとまった場合に相続財産がどうなるかという話ですね。

 

遺産分割協議がまとまると、遺産分割協議書を作成し、

これに基づき名義変更や、相続税の申告をすることになります。

 

遺産が分割されると、相続財産は相続開始に遡(さかのぼ)ってその相続人の固有財産となります。

「遡って」というのは、「共有状態だった相続開始から遺産分割完了までの間も

相続人の固有財産であったとする」ということです。

 

一方、遺産分割協議がまとまらない場合には、

相続財産は相続人全員で共有の状態がずっと続きます。

 

こうなると、名義変更や土地の処分もできず、預金もそのまま凍結状態となります。

最近の遺産分割状況

寺尾会計の最近の相続税申告における遺産分割状況を見ると、

「相続税申告期限までに遺産分割協議が整った割合」:「遺言」:「未分割」は、

80:15:5くらいの割合になっています。

 

遺産分割協議は整った場合でも、「問題なく進むケース」と、

「素直に書類をそろえてくれないとか、色々調整して、ようやくまとまったケース」は

7:3くらいです。

 

つまり、円満相続ができる事例は100件中70件くらいということで、

遺産分割が大変になってきていることが窺(うかが)われます。

 

それでも名古屋市緑区付近の相続は、旧市内や、都心部、統計などからみる内容より、

旧家族制度の考えが残っている感じがします。

親の世話をしたとか、

本家だからこれからも先祖の供養や地域の付合いが大変でしょうと

理解を示すこともまだ比較的あります。

 

とはいえ、最近は「それはそれ、これはこれ」と割切って、

法定相続分を意識した遺産分割をする傾向にあります。

 

これは、戦後教育を受けた層が、相続人の立場になってきているため、また、

インターネットで色々な情報が取れる時代になっているために、

だんだんと法定相続の意識が高まってきているからだと思われます。

 

被相続人と相続人間。

相続人と相続人の間。

 

この間は、一方の想いだけでは埋まりません。

遺言を書くとき、分割協議をするときなど、双方の理解が求められるところです。

 

相続させる側としては、大げさですが、どういう形で人生の総決算をするのか、

受ける側も権利主張だけでなく、親の気持ちを尊重しながら相続する配慮が必要では

ないかと考えます。

 

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