赤字1800万円の小売店が、たった一年で500万円の黒字になったワケ

ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表
梅本泰則

第6回 誰に何をどうやって売るか

次の作業

社長は、経営計画書の作成に挑戦することになりました。

お店の方向性や大まかな目標が明確になっていきます。

 

この次の作業は

誰に、何を、どうやって売るか」ということを決めることです。

 

社長は、そんなことは決まっていると言いたそうでした。

「スポーツ選手に、その人に合ったスポーツ用品を店舗で相談しながら売る」

とくらいに考えていたに違いありません。

しかし、そこをもっと深く考えていくことが必要です。

誰に売るか

まず「誰に」を明確にするために、社長と話し合いを重ねました。

そのためには、お店の典型的なお客様の姿を描き出していきます。

 

その結果、

「全国大会への出場を夢見て、毎日泥だらけになりながら練習に励んでいる、

明るくて元気なスポーツ少年」というように絞り込むことが出来ました。

 

このお客様が決まれば、そのお客様に適した商品をそろえることが出来ます。

今までのように、メーカーさんや問屋さんの勧める商品を

言われるままに仕入れるということはなくなります。

 

広告宣伝する時も、そのお客様に向けた内容にすれば、より鮮明に訴えることができます。

何を売るか

「誰に」の次は「何を」です。

 

これは商品のことではありません。

お客様にどんな価値を提供したいかということです。

 

これも社長とじっくりと話し合いました。

その結果、

お客様にスポーツを上達して欲しい、というお店の思いがあるので、

そのためのサポートができる情報やノウハウを提供していこう

ということに決まりました。

 

そうなると、今までのように値引きをして売ることの意味がなくなります。
値引きをしても、それがスポーツの上達につながるわけではないからです。

どうやって売るか

そして、「誰に」「何を」の次は「どうやって」を考えます。

 

これは、実にさまざまな方法が考えられますが、

大切なことは、お客様にお店のファンになっていただくことを考えることです。

そして、多くのお客様に繰り返し繰り返し買っていただくための方法を考えます。

 

例えば、その一つが店頭でのイベントです。

今まで、チラシで宣伝するときも、商品の写真や特別価格が載っているだけでした。

 

そこで、
キャッチボール教室とかサッカーボールリフティング大会とかの店頭イベントを考えて、

それをチラシなどで案内するのです。

 

そして、その後実際にイベントを行いました。

そうしたら、お店にはお客様が押しかけて、今までにない盛り上がりを見せたのです。

 

また、ネットの活用も重要で、

ホームページにスタッフブログを毎日書き込むといったことも

ファンづくりには有効になります。

 

ブログは、社長も社員も全員で書いてもらいたいところですが、

まずはブログの得意な社員にお願いしました。

すると、ブログを読んだお客様から多くの反応が寄せられます。

書いた本人もびっくりするやら、嬉しいやらです。

 

いずれにしても、この段階で、「どうやって」はさまざまなアイデアが出ました。

基本は「お客様をファンにする」ことでした。

 

こうして、ようやく「誰に、何を、どうやって」販売するかということの骨格が

出来上がります。

これで、経営計画書作りの最初の関門は突破です。

しかし、それで経営計画書が出来上がるわけではありません。

 

実際に、このお店の正式な経営計画書が完成するには、

その後1年を待たなくてはなりませんでした。

お店の変化

とはいえ、この時点で、まがりなりにもお店の方向性は決まりました。

お店の体質も少しずつ変わっていきます。

 

私が相談を受けてから1年を過ぎた頃には、

商品を定価で売ることに、もう抵抗はありません。

全部は無理にしても、定価販売の商品が増えていきます。

 

さらには、

値引きをしなければ買わないというお客様はこのお店のお客様ではない、

というところまで意識が変わっていったのです。

また、毎月毎月、販売目標に対する達成度合いを見て、

その対策を真剣に考えるようにもなりました。

 

そうしたお店の努力が実り、

前年に1800万円の赤字だったお店が、見事一年で500万円の黒字に転換したのです。

私は心から皆さんに拍手を贈りました。

 

とはいえ、このお店の改革は途中でしかありません。

さらなる成長に向けて、進んでいくことでしょう。

 

 

さて、皆さまいかがでしょうか?

企業の改善・改革は、時間がかかるものです。

 

しかし、今回の事例のように、

まずは、すぐに成果につながる方法を試してみてはどうでしょう。

 

すぐに成果が出れば、お客様との信頼感が生まれ、お客様も自信がついてきます。

本質的な問題解決はその後で良いのです。

 

もちろん、すぐに成果につながる方法はお客様ごとに違いますが、

そこを発見するのが私たちの仕事であり、能力ではないかと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

[完]

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