黒字経営、そして赤字からの脱却

さくらマーケティングサービス代表
西原弘之

第6回 成長の為に何を捨てるのか

「量より質」と「質より量」のバランス

利益を考える時には時間や生産性を「見える化」しましょうと前回述べました。

一昔前は「人、モノ、金」が経営資源というくくりでしたが、

現代はその四つ目に「時間」が入ってきます。

 

有限な資源である時間を、同じく有限な人、モノ、金にどう括り付けるかという問うた時に

つまるところ「量より質」なのか「質より量」なのか

どちらで行くのかという基本的な方向性に議論が行きついたりします。

 

利益を上げている会社の名前を思い起こしてみてください。

 

この選択についてどちらかをはっきりさせている会社が多いとは思いませんか。

 

大手企業は別かもしれませんが、中小規模で利益を上げているところは

量と質、どちらを取るかの戦略がはっきりしています。

 

読者の皆様の会社はいかがでしょうか。

 

とはいえ、実際のところ選別受注をして利益率を追ってみたり、

雇用できる人手に限りのある中で売り上げ規模を薄利で追ったりすることは

ほとんどの中小規模の事業者にとって現実的ではありません。

 

量と質、この両者の"ベストバランス"をどうとるかが経営者の腕の見せどころ
なってきます。

QCDSMのバランス

また現場サイドの切り口で行けば、昨今は製造業・サービス業・建築業を問わず

QCDSM

という言葉が経営者の課題として言われています。

 

Q:Quality 品質

C:Cost 価格

D:Delivery 納期

S:Safety 安全
M:Moral モラル

 

この5要素のバランスを経営者が采配することで売上と利益を確保しに向かうのですが

これが互いに二律背反するので経営者は悩みます。

 

たとえばQを上げればCに跳ね返る、Cが上がって売値が上がれば営業部隊のMは落ちる、

Dを速めればQに響く、といった具合にこの5要素がすべて丸く落ち着くという局面は

ほとんどないに等しいのが現実です。

 

互いが背反するので現場は混乱したり、

中規模組織になるとセクショナリズムで反目したりという事も起こりがちで、

対立しがちな現場間の調整を経営陣が乗り出してスムースにすることにより

状況を打開する必要も出てきます。

 

この際に経営者に必要な意思決定は「何を捨てるか」です。

何かにつけ全て生かそうとする経営者、捨てる事の出来ない経営者は赤字に苦しんでいる。

 

私が見てきた限りでは

これはどの国の経営者に限らず厳然とした事実ではないかと思います。

成長の為に何を捨てるのか

何をやるのか、ではなく何を捨てるのか。

「やる」より「捨てる」方が難しいのです。

 

売上と利益が欲しいわけですから、捨てるなんてとんでもない、そう思われるでしょう。

 

しかし、時間や管理について前回までに書きましたように、

裏に潜んでいるロスが赤字の原因や黒字にブレーキをかけている、

そういう事が十分あり得ます。

 

経営者はそれを治癒しに行くか、捨てるか、そのどちらかの選択を迫られるのです。

 

その検証の手法としてボストンコンサルティンググループが開発したPPM

(プロダクトポートフォリオマネージメント)は有名な分析手法でして読者の皆様も
一度ならず目にしたもので頭では十分お分かりの手法でしょう。

 

今一度、ご自分の会社の売上構造と利益構造をこれに当てはめて分析してみてください。
皆様の会社の今後の利益成長の核を何に持ってくれば良いのか
改めて見える化してみましょう。

 


残り紙面も少なくなってきました。

読者の皆様の会社が十分な黒字なら私が書いた今回の連載は不要なものですが、

赤字ないしは黒字が計画値以下という企業の場合には

これらの基本の部分に何らかの問題が潜んでいるはずです。

それを発見し、分析し、治癒するのか、捨てるかを決める。

その行動サイクルを回していくのです。

 

今回の連載が読者の皆様にとっての「黒字経営の指針」の一助となれればと願っております。

さくらマーケティングサービス

代表 西原弘之

http://sakuramarketing.jp

[完]

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