在庫問題を考える

在庫管理コンサルタント

豊口幸久

第4回 何故在庫が増えるのか ~会社組織編~

在庫が増えている要因は、一般的に次の4つである事が多い様です。

  1. 必要な在庫と不要な在庫の識別が出来ていない
    → 在庫の種類と数量に対し、明確な管理資料が策定できていない
  2. 外部要因で不足すると困るので、ともかく持っておく
    → 要求から入手までのLTが明確でない(守られない)
  3. 不足すると大変なので、ともかく持っておく
    → 担当者が自分を守ろうとする
  4. 注文/売上/販売の増加見込みが当たらない
    → 見込みの立て方がうまくいかない

先回は1と2の在庫管理に問題がある場合について見ていきました。

今回は3と4の企業組織に問題がある場合について見ていきましょう。

3.不足すると大変なので、ともかく在庫を持っておく

一般的に、担当者は叱られたり怒られたりした場合、それを改善しようとします。

 

在庫過剰で叱られた場合、叱られた事で終わります。

ところが、在庫不足で叱られた場合には、不足した案件への対応も必要です。

 

担当者としては、在庫過剰のほうが在庫不足よりも負担/問題が少ないため

在庫が増えていくことになります。

 

しかも、不足になった在庫だけではなく
全体として過剰に在庫を持つ事を習慣化していきます。

 

「過剰在庫は資金繰り上問題である」と在庫の教育をしても、

知識としての教育となって、あまり効果がありません。

こういった担当者の行動を変えるには、

通常の業務の中で、在庫削減への取組みが評価される事が必要になります。

4.注文/売上/販売の増加見込みが当たらなかった

販売見込みは元々見込みであり、当たらないのが当り前です。

当たらなかった結果を管理者(社長を含む)が責めるのは、無意味であるだけでなく

担当者のやる気を削ぐ原因にもなります。

 

見込みが外れること自体は、在庫削減の問題点にはなりません。

 

ここでの問題点は2つです。

① 販売見込みを判断しているのはだれか

② 無理な予算を立てていないか

 

= ①販売見込みを判断しているのはだれか =

 

「営業から"お客様が何を購入するか判らない。正確な見込みは無理"と言われます」

と、よく耳にする事があります。

 

しかし、本来見込みを立てるのはスタッフ部門の仕事で、

営業はその基本となるデータを提供する事が重要な仕事です。

 

見込みを立てる基本となる情報の中で、1番必要なものは、お客様の動向です。

当社の収めているお客様の商売は伸びているのか(行くのか)?

どの様な方向性を持っているのか? また、それによる当社への影響度です。

 

7-11(セブンイレブン)の対応は有名です。

まず、購入した人の年齢層/性別等からその店の販売見込みの基本データが作成されます。

これに地域のイベント等の付加情報及び天気情報等から最終見込みが作られます。

それでも見込み精度は100%ではありません。

 

一般的会社の見込みは、これほどの情報がありませんので

『精度100%は無理』『わかるはずがない』と考えるべきです。

 

= ②無理な予算を立てていないか =

 

実は、会社経営で予算と実績評価が重要な要素となっている事が在庫を増やす原因である

との指摘もあります。

 

「この見込みでは予算達成出来ないから生産計画を増やして」と指示し、
予算/実績評価の際には「何故在庫が増えた」と矛盾したクレームを言う管理者がいます。

 

予算は会社経営における基本データ(利益計画/投資計画/賃率/経費予算等)ですが、

最終的な結果との間に差が出ることを理解した上で予算化すべきです。

 

また、予算達成の為の施策がなければ、予算は達成できません。

むしろ、施策なき予算自身があまり意味を持たない事を認識すべきです。

 

そして、無理な数字を指示しても結果が出ないだけではなく、

担当者の大きなストレス(モチベーション低下)になる事を認識すべきです。

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