2026.04.23
寺尾会計の税務的な毎日
取引相場のない株式の評価方法が変わります
去る4月20日に、取引相場のない株式の評価に関する有識者会議が開催されました。
「取引相場のない株式」は税務用語で、「非上場会社の株式」と概ね同じ意味です。
上場会社の株式は、日々売り買いされる金融市場があるため、その売買価額(時価)は明確です。
しかし、
非上場会社の株式には取引相場がないため、その株式の価額を客観的に把握することができません。
そこで、相続や贈与、譲渡などの際には、
税務上の時価として、一定の評価方法によって算出した金額をその株式の評価額として課税します。
取引相場のない株式の評価方法には2つあります。
①原則的評価 ※ 家族経営の会社さんは大体この評価方法を用います
②特例的評価 ※ 株主を分散している会社さんはこの評価方法を使うことも多いです
①原則的評価は、次の2つの評価額のどちらか、あるいは、両方を併用する評価方法です。
A 類似業種比準価額 ※ 収益性などを上場株式と比較して算定する評価額
B 純資産価額 ※ 一株当たりの会社財産の金額を算定する評価額
この2つをどのような割合で組み合わせるかは、会社の規模や売上の規模等で一律に決まります。
②特例的評価は、過去2期分の配当金の金額を基に算定する評価方法です。
このように、
できる限り企業の状況を反映した評価額が算定されるように様々な要素を加味する現行の評価方法ですが
A 類似業種比準価額が、B 純資産価額よりも相当程度低い水準になるような設計となっており
会社の規模や売上の規模等、事業内容等が少し変わるだけで、株式の評価額が大きく変わってしまいます。
恣意的な操作を行い適用される評価方法を変更することで株式の評価額が操作前の評価額より4倍も変わってしまう事例や
M&Aなどにより第三者へ実際に売却した価額と税務上の評価額との乖離が13倍もある事例もあります。
今般の有識者会議は、会計検査院による指摘をきっかけとして
実務上・学術上指摘されていた現行の評価方法の問題点を検討し、より適切な方法へ見直すために
次の4つの観点から会議が行われ、2028年からの改正を目指しています。
1)『評価額の”崖”』の解消 ※AとBの価額差の是正等
2)『今日的観点』からの見直し ※②で使用する還元率の見直し、企業の収益力等の反映等
3)評価額の『恣意性・操作性』の排除 ※株価を圧縮するスキームの排除等
4)第三者への事業承継等の動向の加味 ※M&Aの企業価値評価を踏まえる等
下記はいずれも想像の域を超えませんが、
予想をするのであれば次のような変更がある可能性があるかと考えます。
評価方法全体について
・根本的な部分から抜本的に変更する
・M&Aで使われる企業価値評価手法による評価額を評価に加える
・会社規模等の判定を複数年において行うことで、恣意的な数値操作による租税回避をしにくくする
・①原則的評価の評価額の組合せを決める会社規模等の区分を細かくする
A類似業種比準価額について
・全体的に引き上げる
・配当金を基準値から外す
・役員報酬や役員退職慰労金の支給前の収益力を加味する
・評価する際に、利益金額の比重を高める
・比準する上場株式の株価の選択肢を減らす
B純資産価額の計算において
・①原則的評価における純資産価額の加味する割合を減少させる
・引当金など負担が見込まれる費用を負債として評価に加味する
②特例的評価
・還元率を現行の金利変動を踏まえて低減する
・無配の場合の最低金額を引き上げる
具体的にはこれから秋にかけての検討が待たれます。
いずれにせよ再来年には取引相場のない株式の評価方法が大きく変わることとなりそうです。
現行の制度において①原則的評価は、会社規模が大きい程、A類似業種比準価額が評価額に影響する割合が大きくなります。(低い水準の評価額になる)
また、配当金を出していない会社については、類似業種比準価額がより低く評価されています。
会社の規模や有識者会議での検討の方向性によっては、相続時精算課税や納税猶予の適用も含めて、
早めに株式を承継した方が有利になる方が出てくると思われます。
今年は取引相場のない株式の評価方法の行方から目が離せません。
取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)
https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/20260420/pdf/01shiryo_kabukaigi.pdf
第4 相続等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価について
https://report.jbaudit.go.jp/org/r05/2023-r05-0654-0.htm
