2025.09.23
家督相続 〜円満な相続のために〜
小規模宅地等の特例 会社が使っている土地篇【相続税】
小規模宅地等の特例という制度を聞いたことがありますか。
「小規模宅地等の特例」とは
被相続人(亡くなられた方)の土地について相続税の評価額を大幅に減らせる特例です。
結果として、相続税の負担を軽くすることにつながります。
この特例は「自宅の土地(特定居住用宅地等)」についてよく説明されますが
今回は 経営者の方に関係が深い「特定同族会社事業用宅地等」 をご紹介します。
まず「特定同族会社」とは
相続開始直前において、被相続人等が株式・出資の 50%超を有している会社 のことです。
つまり、被相続人が実質的に支配している会社とイメージしてください。
※被相続人等には次の方が含まれます。
・被相続人本人
・被相続人の親族
・被相続人と特別な関係にある者
被相続人の土地が「特定同族会社事業用宅地等」にあたると
その土地の 最大400㎡までの地積 について、相続税評価額が 80%減額 されます。
この「特定同族会社事業用宅地等」に該当するための主なポイントは以下の通りです。
① その土地を取得する人は・・・?
・取得する人が 特定同族会社の役員であること
(相続開始日に役員でなくても、申告期限までに役員であればOK)
・取得する人が 被相続人の親族であること
(相続人に限らず、遺贈で親族が取得した場合も対象)
② その土地の申告期限までの利用状況は・・・?
・特定同族会社が事業を継続していること
・取得した人がその土地を持ち続けていること
③ その土地の相続開始直前の利用状況は・・・?
・被相続人の土地に 建物または構築物があること
(その所有者は「被相続人本人」「同族会社」「生計を一にする親族」のいずれか)
・その建物や構築物を 特定同族会社が事業に使っていること
(貸付業以外の事業である必要があります)
・賃料のやり取りがあること
→ 実務上、ここが最も落とし穴になりがちなポイントです。
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【ケース1】
土地所有者:被相続人
建物所有者:被相続人 or 特定同族会社
建物使用者:特定同族会社
この場合、「地代」や「家賃」の支払いがあることが必要です。
実際には、無償で使わせている(使用貸借)ケースも多いため、
事前に賃貸借関係や支払状況を確認しておくことが大切です。
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【ケース2】
土地所有者:被相続人
建物所有者:被相続人の生計一親族
建物使用者:特定同族会社
この場合、「地代」はゼロ、かつ「家賃」は支払われている必要があります。
「地代アリ」の場合には、被相続人の貸付先は生計一親族となるため
この土地は、特定同族会社事業用宅地等に該当しなくなります。
また、「地代」も「家賃」も無償の場合には小規模宅地等の特例の適用はありません。
小規模宅地等の特例は、相続人の 生活や事業の基盤を守るため に設けられた制度です。
この特例の適用があるかないかで、相続税の額が大きく変わることも少なくありません。
ただし、要件の中には「相続開始直前の利用状況」のように、相続発生後には変えられないものがあります。
そのため、生前中にこの特例が適用できるかどうかを確認し、準備しておくことが大切です。
参考HP
国税庁 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm