2025.09.13
寺尾会計の税務的な毎日
新たな雇用体系「スキマバイト」「スポットワーク」への対応
スキマ時間を活かして収入を得たい労働者と
労働力不足の中で柔軟に人材を確保したい企業を結びつける仕組みとして
「スキマバイト」や「スポットワーク」が注目を集めています。
令和4年には、スポットワーカーに関する調査や行政支援を目的に
「一般社団法人スポットワーク協会」が設立され
㈱タイミーや㈱メルカリなど主要な関連企業の代表が理事に就任しました。
この動きは広がりを見せており、
財務省の広報誌「ファイナンス」では令和6年12月に「経済トレンド」として特集されました。
さらに令和7年7月には厚生労働省が上記の協会に対し、適切な労務管理に関する協力を要請し
労働者や企業向けに、スポットワークの注意点をまとめたリーフレットも公表されています。
スポットワークの大きな特徴は、従来のアルバイトと異なり、数時間単位や単発で働ける点です。
学業や家事、ほかの仕事と両立しやすいことから、多様な働き方を求める人々に支持されています。
また、「スキマバイト」と「派遣」も、似ているようで異なります。
スキマバイトは企業と直接雇用契約を結ぶのに対し、派遣では派遣会社が雇用主となります。
この違いにより、スキマバイトの場合、労働基準法等を守る義務は契約を結んだ企業側に生じます。
例えば、同じ企業で週40時間を超えて働かせる場合には、労使協定を結び、割増賃金を支払う必要があります。
ところが、労働者が複数のバイト仲介アプリを併用していたために
同一人物が合計で週40時間を超えて就労していた事実に企業側が気付けず
割増賃金が支払われなかったという、労働時間管理に難儀する事例も実際に起きています。
留意すべき点は労務関係だけでなく、税務上にもあります。
スポットワークは日雇いが多いため、源泉徴収税額表の「丙欄」が適用されるのが一般的です。
たとえ丙欄であっても労働者が多数であっても、
給与を支払う企業は、すべての労働者に源泉徴収票を交付する必要があります。
ただし、年末調整を行わず、年間の支払額が50万円以下の場合には、
その源泉徴収票を税務署へ提出する必要はありません。
とはいえ、前述のとおり、
複数のアプリを利用することで年間の支払額が50万円を超えることもあり得るため、
支払状況を正確に管理することが欠かせません。
労働者側にも税務上の注意点があります。
2か所以上から給与を受け取っている場合、年末調整されなかった給与の合計が20万円を超えるケース等、確定申告が必要になることがあります。
自分で申告の要否を判断しなければならない点は見落とせません。
このように「スキマバイト」「スポットワーク」は新しい雇用形態であるがゆえに、
労務管理だけでなく、人材育成や税務処理など多面的な配慮が求められます。
制度を正しく理解し、適切に活用していくことが重要です。
参考HP
厚生労働省 いわゆる「スポットワーク」の留意事項等
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59321.html
国税庁 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7411.htm
国税庁 給与所得者で確定申告が必要な人
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm