2026.04.03
家督相続 〜円満な相続のために〜
この時代のアパート節税、ちょっとまって!【相続税】
相続対策には「分割対策」「納税対策」「節税対策」があるといわれます。
このうち、節税対策として広く知られているものの一つが「アパート節税」ではないでしょうか。
これは、アパート(貸家)を建築すると相続税負担が減少することを利用した対策です。
アパート節税は主に2つの点で相続税負担を減少させる効果があります。
① 土地の相続税評価額を引き下げる
相続税は、相続が開始した日現在の財産の時価に対して課税されます。
預貯金や上場されている株式であればともかく、土地や建物について「時価」といわれても
その財産の価値をいくらと見るのかは、見る人によって幅が出てしまいます。
人によって時価の金額が異なるのでは、課税の公平性を保つことはできません。
そこで、相続税申告においては、原則として
「財産評価基本通達」という基準を用いて評価した金額(相続税評価額)を『時価』としています。
所有している土地の上に建物を建築して、建物を人に貸し付けた場合には
所有している土地が更地であったり、自宅として利用している場合に比べて
土地の相続税評価額は減少します。
減額する割合は地域によって異なりますが、名古屋市緑区の場合は一律15%減少します。
例えば、土地の評価額が1億円とすれば、評価額は1,500万円減少します。
この場合、相続税率が40%であれば、相続税が600万円減少します。
あるいは、相続税率が10%であれば、相続税は150万円減少します。
② 相続税評価額と実際の支払額との乖離を活かす
相続税を計算する際の建物の時価は、原則として固定資産税を課税するための評価額を用います。
この固定資産税評価額は、建築した際に支払った金額の40~60%程になることが一般的です。
ですから、建物を1億円で建築したとすると、建物の評価額は5,000万円程となる計算です。
建物を建築した方の相続税率が40%とすれば、課税される相続税額は2,000万円です。
一方、建物建築をせずに、現金で1億円を所有している方の相続税率が40%とすれば、
課税される相続税額は4,000万円です。
アパートを建築することで、実に2,000万円の節税ができるということになります。
なお、相続税率が10%の方の場合、アパートを建築することでの差額は500万円です。
このように、
相続税率が高い方のアパート節税は「相続税」単体で考えると、有効な節税対策であると言えます。
しかし、アパートは建築してから30年、40年という長期スパンで所有していく資産です。
長期的投資であるがゆえに、不動産経営や維持管理の視点、また、所得税住民税や社会保険の増加、
その不動産事業を承継するであろう相続人の意向など、多面的な影響のバランスを確認することは欠かせません。
いくら相続税を納めなくてよくなったとしても
毎年の資金繰りが回らない、相続人は不動産事業をしたくないという状況に陥っては
子孫に苦労を渡すことにもなりかねません。
ここ数年、借入金利率の急上昇、資材の高騰、建物躯体の材質の変移等により、
長期的には持っていればいるほど毎年支出超過となる計画も散見されます。
特に融資を受けてアパート節税される方のキャッシュフローの悪化を心配しています。
都心の家賃であれば有効な節税対策であっても、
お持ちの土地の所在地における家賃では建築費を賄えず負の財産を生み出してしまう可能性もあります。
失われた30年を経て、アパート節税の時代が終わりを迎えようとしているとみる向きもあります。
「アパート節税」を行う前には、
必ずご自身の財産全体の現状把握と、相続税の試算を行い、家族や第三者とも意見を交換しながら
その対策が総合的にご自身やご家族にふさわしいかどうかを判断しましょう。
その際には
「分割対策」「納税対策」「節税対策」「相続人の希望」「収益性」「リスク」「出口戦略」といったポイントでレーダーチャートを作成すると、その対策による全体的なバランスが可視化でき、関係者との認識を深めることができるのではないでしょうか。

