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コラム

2025.12.03

社長応援日記

委託側と受託側、Win-Winな取引がされていますか

近年の急激な物価上昇を上回る賃上げを、社会全体で実現するためには
サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させることが必要である、という認識のもとに
下請中小企業振興法(下請振興法)が改正され、受託中小企業振興法が施行されます。

今回は令和8年1月1日から施行される受託中小企業振興法についてご紹介します。

「受託中小企業振興法」(以下、振興法)は
委託事業者と受託事業者との間で適正な取引環境を整備することにより
双方が適正な利益を得て、共存共栄・互恵的な取引関係が構築されることを図るための法律です。

委託事業者が一方的に不利な条件を押し付けることを防ぎ、
書面交付義務や報酬の支払期日などの基本ルールを定めています。

また、が計画認定や助成措置を通じて受託事業者の経営力向上を支援する役割も担い、
健全な取引慣行と中小企業の成長を促進する仕組みになっています。

以前ご紹介した「取適法」と「振興法」は同一の社会要請により同時に改正されました。

取適法が、委託事業者からの不当な減額・遅延などを取り締まることにより
中小受託事業者を“守る”法律であるのに対し

振興法は、中小企業が委託事業者との適正な取引関係を築けるように
中小受託事業者を“支援”するための法律です。

取適法についてはこちら


振興法の適用対象となる取引は、次の2つを両方とも満たす取引です。

取引の内容が次のいずれか(第2条1項)
 ・製造 委託
 ・修理 委託
 ・情報成果物作成 委託
 ・役務提供 委託
 ・特定運送 委託 <NEW>

事業者の規模を委託者側・受託者側とも満たす(第2条3項、4項)
 ・委託側(=親事業者)の資本金や従業員数が 受託側より多いこと
 ・受託側(=下請事業者)が
   資本金等の額3億円以下 あるいは 従業員が300人以下 (製造、建設、運輸等)
   資本金等の額5千万円以下 あるいは 従業員が100人以下(サービス業)

なお、振興法は取適法より対象となる事業者の範囲が広いため、
振興法のみが適用される事業者があります。


振興法により、国は「振興基準」という一種のガイドラインを定めています。

発注側には、この基準に沿った次のような取引慣行を実行する努力義務があります。
 ・取引内容の明確化
 ・適正な支払い
 ・一方的な不利行為の防止
 ・受託者の成長への配慮

受注側にとっては
この基準が「何を要求してよいか」「どのような取引条件が望ましいか」の“物差し”になるため、
価格交渉や取引見直しが行いやすくなる効果があります。

国や地方公共団体には、必要に応じて、中小受託事業者又は委託事業者に対し、
振興基準に定める事項について、指導又は助言を行うとともに、
適切な具体的措置をとるべきことを勧奨する義務があります。

例えば、国が年に2回設けている「価格交渉促進月間」には
国が各事業関係団体に対して、発注側の積極的な価格交渉対応の周知を依頼しており、
実際に一定の効果が見られます。

「価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果」によれば、
価格交渉が行われた事業者は59%に達しています。
ただし、交渉を恐れて申し出なかった事業者も7%あり、
コスト上昇分の価格転嫁が全くできなかった事業者も12%存在します。

価格交渉や取引トラブルで悩む受託事業者は、振興基準に照らして行動を確認したり
相談窓口(取引かけこみ寺)を活用することで解決への糸口が得られるかもしれません。

これまで「下請」という言葉には「親から言われたことをやる」という受動的なニュアンスがありましたが、今後は「受託事業者」として主体的に取引に関わり、自ら適正な条件を求める姿勢が社会的に求められています。

参考HP
中小企業庁 振興基準(令和7年10月1日付)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2025/251002_01.pdf

中小企業庁 価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/follow-up/index.html

下請かけこみ寺(取引かけこみ寺) チラシ
https://www.zenkyo.or.jp/kakekomi/pdf/chirashi-kakekomi-R6.pdf

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