2025.10.13
寺尾会計の税務的な毎日
相続税の税務調査の選定手法が変わりました
令和7年7月から、相続税の税務調査についてAIが本格的に活用されています。
令和5年以降に開始した相続に係る相続税申告書がAIによる調査事例の選定対象です。
具体的には、以下のようにAIと人力のハイブリットでの調査選定が行われます。
①AIにより、全ての相続税申告書に対して「リスクスコア」を付与する
②AIにより、申告漏れ・過少申告・誤りの可能性が高いものを分析する
③現場の各国税局等はスコア等に基づき、税務調査をするかどうかを判断する
本年はAI活用の初年度であり「リスクスコア」がどの程度適正に付されているか、
非違割合や追徴税額がどのように変化するのか、
令和8年12月に公表される「相続税の調査等の状況」の公表が待ち遠しいところです。
AIを使って相続税調査を強化することには、以下のような目的・効果があります。
1.効率化・人的資源の有効活用
膨大な申告書をすべて人手で確認するのは限界があります。
AIがリスクの高い申告を自動的に抽出することで、
職員は調査業務により多くの時間を割くことができます。
2.公平性の向上 (ベテランの勘や経験の見える化)
数値データや申告内容の特徴を基にスコア化されることで
従来注目されにくかったケースからも申告漏れ等がより確実に発見されやすくなる。
3.税収確保
申告漏れ・過少申告による未収税の把握・徴収を強化することで、国としての税収基盤を強める。
4.誤申告・不正の抑制
調査の精度向上により、納税者や税理士における「正しく申告する」意識の向上も期待される。
国立社会保障・人口問題研究所の全国将来人口推計(令和5年公表)によれば
今後50年以上にわたって、毎年150万人以上の方が亡くなると見込まれています。
税務職員の人材確保も難しくなる中、効率的な税務調査は公平な課税を行うために
電子化及びその活用方法が模索されています。
過去の税務調査データ、各種金融・不動産のデータなど多くの個人情報を
AIが学習材料とすることになるため、マイナンバーの取扱いと共に、
国税庁におけるデータの安全管理・個人情報保護能力がこれまで以上に問われます。
参考HP:
日経 相続税もAIが調査へ 国税、申告漏れスコア化で狙い絞る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOTG2746X0X21C24A2000000/