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コラム

2023.05.13

中小企業の事業承継

株主と連絡がつかない問題

株式会社の事業承継を困難にする理由の一つに、所在不明株主の問題があります。
所在不明株主とは、株主名簿に記載されているものの連絡がつかない株主のことです。

所在不明株主が発生する理由はいろいろあります。

平成2年の商法改正前は、株式会社の募集設立を行うためには最低7人の発起人が必要であり、
発起人は最低1株を引き受けなければならなかったため、出資はしないで名前だけ貸すことがよくありました。この時の名義株主が所在不明株主となっていることも少なくありません。

さらに、設立から時間が経過し、相続時や住所変更時に株主名簿書換えの手続きが行われないことで
所在不明株主が発生しまっていることもあります。

所在不明株主がいると総株主の同意を要する事項を決議することができないため
М&Aや組織変更の障害となるケースもあります。

また、所在不明株主の保有する議決権が多いと、株主総会の定足数に満たない、特別決議ができないなど、会社の運営に大きな支障が生じる事態もおこります。


所在不明株主の解決方法は、株主の所在を探し当てるか、その株主から株式を取得するかの2択です。

どちらも時間や費用のかかる行動となりますが、
後者の場合、所在がわからない株主が次のいずれにも該当するときのみ
その株式を所有者の了解なしで競売・売却・買取できることとなります。(会社法197条)

・通知等が5年以上継続して到達しない
・継続して5年間剰余金の配当を受領しない

所在が不明であっても、株主の銀行口座へ配当金が送金できる場合には、この規定は利用できないということになります。
また、上記要件を満たす場合であっても、問題が解決するまでに最低5年の期間が必要です。


そこで、令和3年8月2日から、中小企業経営承継円滑化法により、特例が施行されています。
この特例は、中小企業庁の認定を受けることで、上記要件の「5年」が「1年」となる制度です。

この特例は、所在不明株主の存在のみが事業承継の障害となっているケースを対象としているため、
所在不明株主の議決権割合が少なくとも1/10を超えることなど、認定対象となる会社は限られています。
しかし、この制度に該当するような会社にとっては、とても有効な特例であるといえるでしょう。


所在不明株主や名義株主の問題は、
円滑な事業承継、会社運営を行うために解決しておきたい課題の一つです。

名義株主に相続が発生すると、関係者や権利関係がますます複雑化し、
所在不明株主が発生する可能性も上がっていきます。

早めに検討・対処していくべき問題といえるでしょう。

参考HP:中小企業庁 所在不明株主に関する会社法の特例
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu/kaisha-hou_pamphlet.pdf

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