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コラム

2021.10.13

寺尾会計の税務的な毎日

金融所得に対する所得税課税の行方

岸田総理が自民党総裁選の際、中間層復活のための政策として
金融所得に対する課税強化の考えを打ち出していました。

その後、課税見直しは当面、検討しない旨が明言されました。

この金融所得への課税強化の考えの基には、
納税者が各自の担税力に応じて租税を負担する」という租税の理念があります。

所得税では所得が増えるほど税率が上がるという「超過累進税率」を採用しています。
現行の制度では、所得税・住民税を合わせて
15%(195万円までの所得)~55%(4,000万円以上の所得)が課されます。

一方、「貯蓄から投資へ」という政策的観点から
株の売却益や配当といった金融所得にかかる所得税・住民税は一律20%です。

下表のとおり、高額所得者の方が金融所得が所得に占める割合が多いため、
所得が1億円を超えると税の負担率が下がっていくことになります。

<株式の譲渡所得が所得に占める割合 と 所得税負担率>

東京都主税局 令和元年度 東京都税制調査会(P9、P10)
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/report/tzc31_3/08.pdf

     所得金額    株式の譲渡所得/所得   所得税額/所得
   800万円~1000万円      1.7%          10.8%
    1億円~2億円       14.8%        28.5%
     5億円~10億円       48.5%        24.5%

これでは担税力の高いはずの超高額所得者の租税負担が少ない
だから、金融所得の課税を見直そう、という考えだったわけです。

しかし、下表のとおり、所得が1億円を超える超高額所得者の数はごくわずかです。

<所得金額別の申告納税者の構成割合>

国税庁 令和元年分 申告所得税標本調査結果(P11)
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/shinkokuhyohon2019/pdf/gaiyo.pdf

        所得金額      人数構成割合
       ~1000万円       86.7%
      1000万円~1億円     12.9%
        1億円~       0.3%

金融所得にかかる税率を一律に強化してしまえば、超高額所得者以外の納税者への課税強化にもなります。
かといって、超過累進税率にしてしまえば、租税がさらに複雑で煩雑になります。

税制は毎年改正され、今後どのような流れになっていくか予想もつきませんが
改めて「公平、中立、簡素」という税の3原則を実現するのは難しいと思わされるところです。

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