2020.09.23
経営支援資料館
中小企業こそ、残業を減らしたい! 第1回 残業時間削減がなぜ、大切なのか…?
ライター
吉田典史
残業とは…
政府が、「働き方改革」を推し進めています。
 「働き方改革」のメニューの1つに、労働時間の削減があります。 
 労働時間は、所定内と所定外に分けられます。 
 所定内は契約で決められた労働時間のことで、 
 たとえば、始業の午前9時から終業の午後5時までを意味します。
 
 この場合は所定外が、午後5時以降となります。 
 仮に午後5時から7時半まで仕事をすると、通常、この2時間半が「残業」となるのです。 
しかし、この労働時間の管理がずさんな会社が一部にあるのです。
たとえば、出社や退社時間を今なお記録にしていないのです。 
ある工場では、社員が各自で一覧表に書いていました。 
これでは、正確な記録とは言えないのではないでしょうか。 
管理が行き届いていないと、残業削減がなかなかできません。
 そもそも、減らそうとしても、現状を正確に把握できないのです。 
 つまり、削減以前のところで壁にぶつかっているのです。 
 その意味で、残業削減と労働時間の管理は表裏一体と言えます。 
残業には深刻な問題が山積み
「残業」が多いと、多くの企業で様々な問題が生じます。
 少なくとも、次のようなことが専門家の間で指摘されてきました。 
A 残業代の増加=人件費の増加
 → 他の経費や予算を圧迫し、 現在の事業や新規事業に使う予算が限られてくる場合がある。 
   会社の維持や発展に悪影響を及ぼすことにもなりかねない。 
B 残業代の未払い
 → 労働基準法に基づけば本来支給するべきなのだが、
   支払っていないために、従業員が不満を持つ場合がある。 
   エスカレートすると、労使紛争の火種となりうる。 
C 労働生産性が上がらない
 → 勤労意欲が下がるために、時間内で一定の量の仕事を正確に終えることができなくなる。
   いわゆる、労働生産性が下がる可能性がある。
D 職場や社内の雰囲気が悪くなる
 → 仕事のやりがいやおもしろさを感じることが少なくなり、
   職場での言動やマナーが悪くなり、人間関係がきしむ場合がある。 
   ぎすぎすした雰囲気が漂う職場になるケースも目立つ。 
E 離職率が高くなる
 → 辞めていく人が増える。新たに採用をするが、また退職する。社員の出入りが激しくなる。
   引継ぎが十分に行われないために、仕事のトラブルやデータの流出にもつながる。
   顧客や取引先などに迷惑を与えかねない。 
F 仕組みができない
 → 次々と辞めていくと、社内の仕組みをつくることができない。
   たとえば、営業で言えば、毎月、契約を成立させ、売上を増やすといったものだ。 
   このような仕組みがないと、経営状態は不安定になり、経営危機にも陥りやすい。 
G 採用力が落ちる
 → 新卒、中途双方ともエントリー者数が伸び悩む。
   特に最近の20代は長時間労働に抵抗感を示すケースが増えている。 
   残業が多いと、一段とエントリー者は減っていきかねない。 
   会社説明会や面接、面談で学生から残業について聞かれ、労働時間が長いと思われると、
   採用試験を受けるのを敬遠される可能性が高くなりつつある。 
A~Gまでで該当するものが増えるほどに、社内や部署の雰囲気は悪くなります。
売上などの業績が悪化し、顧客、金融機関や取引先からの信用を失いがちとなることが 
考えられます。 
今後、少子化の時代となり、働く人が確実に減っていきます。
 新たに人を次々と雇うことが難しくなることは間違いありません。 
 その傾向は、中小企業でますます顕著になるでしょう。 
 働き手のことを可能な限り考慮し、労働時間のあり方を考えていかざるを得ないのです。
 その労働時間のあり方を考えていく上での大きな課題が、残業の削減と言えます。  
