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事務所訪問 税理士業界の匠
税理士新聞 2007年1月15日号

 寺尾税理士が事務所の業務改善を強く感じ、実行に乗り出したのが、いまから約3年前。スタッフの意識改革から始まり、いまではスタッフ自らがプロジェクト(PJ)を立ち上げ、効率的・戦略的な事業展開を心掛けている。記帳代行業務ひとつを取っても、スタッフ主体で見直しを進め、ミスなく効率的な仕組み・独自ツールを開発し、自主性を発揮しながら所長を支えている。同事務所で立ち上げたPJからは、多彩なノウハウ・ツールが生まれており、税理士事務所経営に参考となる部分が多い。

業務改蓄効果が出始めた!
ノウハウ・ツールを全職員で開発

 「変革期の会計事務所の進むべき道として、基本業務の徹底と業務改善の必要性を強く感じていた」(寺尾所長)。そのため、業務改善を決断してからの寺尾税理士の行動は早かった。士業事務所専門のコンサルタントを迎え、改善計画を進めて行く。コンサルタントの指導を仰ぐようになったのは約3年前から。この第三者を向かい入れた決断こそ、3年後には見違える事務所に変貌する基になる。自らが顧問先の経営コンサルタント的な立場にいる税理士にとって、外部コンサルタントを向かい入れる決断は、なかなかできることではない。

スタッフの意識 改革からスタート

 コンサルタントを入れたことでまず顕著に現れたのが、スタッフとの″意識のズレ″が埋まった。寺尾所長はさほど意識していなかったが、スタッフの意識のなかで所長との″溝″ができていたのだ。事務所の課題は、所長だけが考えれはよい問題ではなく、現場で動く職員が積極的にかかわらなければ何も変わらない。それだけに、職員の意識改革がコンサルタントを入れることで急激に進んだ。その後は、所長の経営姿勢を職員に共有してもらうため、誰でもが分かるように文章として掲げた。その後も毎月、コンサルタントの指導を仰ぎ、継続的に事務所改善に取り組んだ。

 職員主体のPJが設置されたのはその後間もなく。PJは、平成16年、「監査手続きマニュアルPJ」「電子申告対応PJ」「接遇PJ」「経営支援PJ」、同17年は、「監査PJ」「パソコンPJ」「書籍出版PJ」「相続PJ」「経営支援PJ」「確定申告PJ」。そして、同18年は、(1)所内業務のさらなる効率化、(2)提供サービスの充実、(3)新規拡大ツールの充実を目的に、「事前決算商品化PJ」「サービスメニューPJ」「記帳代行PJ」「顧客拡大PJ」「相続PJ」「経営支媛PJ」を立ち上げた。寺尾所長は、「事務所の中期経営計画から経常方針を定めるのが私の役目。職員はそこから目標を達成するため具体的なPJ立ち上げる。PJ実行の最終的な判断は私が下すが、PJ推進は職員の自主性に任せている」と語る。

PJ担当者レベルの差を克服

 同18年、個々のPJの取組みは、「事前決算商品化PJ」では、決算予測・対策・報告・説明方法などを検討。これにより、基本業務の品質向上はもとより、これまで担当者レベルで差があった、決算・申告業務から派生する付加価値業務の標準化を図った。機械的にできる作業を再確認、6カ月前からのマニュアルとツールを作成。とくに、3カ月前からは、1カ月ごとに何を提供していくのか、誰もが確認できるようにした。付加価値業務に関しても、「当期利益・納税額シミュレーション聞き取りシート」から、節税対策案を提示できるようにツールを作成、具体的な計画案を社長と話し合えるように体系的にまとめている。これらは一部にすぎないが、標準化した決算指導ツールはかなり細かい。

 また、「記帳代行PJ」では、低価格化に対応できる基礎作りに着手。資料回収・整理に要する時間、資料不足、領収書などの内容確認を安全かつ効率よ<可能にする業務フロー・ツールを開発した。

 「サービスメニューPJ」では、トライアル契約を含めた報酬案を策定。これまで、具体的な報酬設定に関しては、すべてが所長頼みであったものを、職員も迅速対処できるメニュー化を図った。新規顧問先の獲得も見越し、起業家向けのパックサービスなども商品として明確な報酬設定を行った。

 このほか、「顧客拡大PJ」は、市場ターゲットを絞り込み、新規月次顧問契約の具体的目標を掲げ、その具体的営業方法を検討・実践してきた。「相続PJ」については、事務所所在地には土地持ち資産家が多く、住宅地として発展している地域のため、その地域にマッチした商品開発が進められた。そのひとつとして遺言、事業承継など小冊子を作成した。「経営支緩PJ」では、経営支援の2件または報酬額100万円の受注といった内容のものを1年を通じ実施してきた。

スタッフ一人ひとりが観客拡大を考える

 3年前から取り組んできたPJは、ノウハウ・ツールとして事務所に蓄積され、毎年PJを進めていくことで、メニューも増え、事務所業務の標準化が図られている。

 ただ、PJは、これらを作成し、実施して終わるわけではない。年末には、パートナーとなる他士業や取引業者、提携先金融機関などを招き、これらPJの発表会を行う。担当責任者および担当者が趣向を凝らしてPJ成果を説明、参加者から意見を聞くなど、さらに品質アップに役立てている。「外部専門家らの意見は大変に重要。サービス内容が良くなるはか、協力したビジネス展開も期待できる。さらに、外部に発表していくことで、事務所メニューを広く知ってもらえ、他土業のパートナーにも、『こんなことまで、寺尾事務所ではやっているのか』と頭の片隅にでも入れてもらえれば、将来的には顧客の紹介につながっていく」と寺尾所長はいう。さらに、「大勢の前で説明することにより、プレゼンテーションの練習になり、実際にお客さまと接するときにうまく話ができるようになる」としている。

 2006年も12月2日に名古屋市内でプロジェクト発表会が開催され、参加したパートナー士業・提携会社の担当者は、「ここまでさまざまなサービスを揃えていることは知らなかった」「PJの具体的展開で、協力してビジネス化できる部分もある」など反応も上々だった。

 寺尾事務所の職員は、仕事の対する自主性を引き出され、皆が活気に満ち、よく喋り、明るい。「どうしたら顧問先に喜ばれるサービスを提供できるか、まだまだ改良していくことが必要です」「顧問先社長と深い関係を築いている最中。身近な相談役になれるように頑張っています」「顧問先を増やすため、何ができるのか真剣に取り組んでいきたい」など、ほかの事務所では、所長もしくは幹部職員しか聞かれない言葉が職員から返ってくる。

 「今は、顧客との信頼を深め、紹介客を増やせるように、打って出て行くための攻めの事務所運営をしていきます」と寺尾所長は目を輝かす。事務所改善の成果は短期間では期待できないが、長い目でみれは確実にステップアップできる。その実証を寺尾事務所が残している。

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